クラウンの質は根管治療の予後を左右する

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被せ物(クラウン)も根管治療の予後を左右する

根管治療は歯を保存するために重要な治療です。この20年間で根管治療法は格段に進歩し、治療成績は向上しました。 根管治療が完了すると歯冠修復が行われますが、根管治療と歯冠修復(人工歯冠、クラウン)のどちらの方が予後に強い影響を与えるのでしょうか? 興味深い報告が、J. Endodonticsという科学雑誌に掲載されています。

被せ物(クラウン)も根管治療の予後を左右する

(Impact of the quality of coronal restoration versus the quality of root canal fillings on success of root canal treatment: a systematic review and meta-analysis Brian M. Gillen et al J Endod. 2011 Jul; 37(7): 10)

適合の良いクラウンを被せても、不十分な根管治療がされている歯は、
根尖病巣の発生率が2.7倍高い。

Comparison of AR/AE vs AR/IE

適切な根管治療がされて適合の良いクラウンが装着されている症例と、根管治療は不十分であるが適合の良いクラウンが装着されている症例を比較しました。
たとえ適切なクラウンが装着されていても、根管治療が不十分な場合は、根尖性歯周炎を2.7倍も発症しやすいという結果でした。
安価な保険で不十分な根管治療が行われたら、高価な自由診療のクラウンを被せても、再治療のリスクは2.7倍もあるということになります。
新しい根管治療法は保険治療に導入されていません。クラウンだけでなく、自由診療で適切な根管治療を行うことがベストと言えるでしょう。

  • AR/AE適合の良いクラウン / 適切な根管治療

    適合の良いクラウン AR/AE適切な根管治療

  • AR/IE適合の良いクラウン / 不十分な根管治療 / 根尖性歯周炎が発症

    適合の良いクラウンAR/IE不十分な根管治療
    ※再治療のリスクは2.7倍

AR/AE vs AR/IE (OR 2.734; 95% CI 2.61–2.88; p < 0.001)

Impact of the quality of coronal restoration versus the quality of root canal fillings on success of root canal treatment: a systematic review and meta-analysis Brian M. Gillenet alJ Endod. 2011 Jul; 37(7): 10)

不適合なクラウンが装着されている歯は、
根尖病巣の発生率が2.8倍高い。

Comparision of AR/AE vs AR/IE

適切な根管治療がされ適合の良いクラウンが装着されている症例と、適切な根管治療がされているがクラウンが不適合の症例を比較しました。
たとえ適切な根管治療されていても、クラウンが不適合の場合は、根尖性歯周炎が2.8倍も発症しやすいという結果でした。
適切な根管治療が行われていても、安価な保険のクラウンを被せたら、2.8倍も再治療のリスクがあるということになります。
自由診療で適切な根管治療を行い、かつ、自由診療で適合の良いクラウンを装着することがベストと言えるでしょう。

  • AR/AE適合の良いクラウン / 適切な根管治療 / 根尖性歯周炎が発症

    適合の良いクラウン AR/AE 適切な根管治療

  • IR/AE不適合クラウン / 適切な根管治療 / 根尖性歯周炎が発祥

    不適合クラウンIR/AE適切な根管治療
    ※根尖性歯周炎は2.8倍も発症しやすい

AR/AE vs IR/AE (OR 2.808; 95% CI 2.64–2.97; p < 0.001)

Impact of the quality of coronal restoration versus the quality of root canal fillings on success of root canal treatment: a systematic review and meta-analysis Brian M. Gillen et al J Endod. 2011 Jul; 37(7): 10)

根管治療の質とクラウンの適合が与える影響の差は認められず、
どちらも同程度に根管治療の成功に影響する。

Comparision of IR/AE vs AR/IE

適切な根管治療がされているがクラウンが不適合である症例と、根管治療が不十分であるが適合の良いクラウンが装着されている症例を比較しました。
根管治療かクラウンのどちらか片方が悪い場合を比較しても、有意差は認められないという結果でした。

根管治療の質とクラウンの適合は、同じくらい根管治療の成功に影響を与えます。クラウンだけでなく、根管治療とクラウンの両方とも自由診療で行うのがベストと言えるでしょう。

  • AR/AE不適合クラウン / 適切な根管治療

    不適合クラウンIR/AE 適切な根管治療

  • AR/AE適合の良いクラウン / 不十分な根管治療

    適合の良いクラウンAR/IE 不十分な根管治療

Impact of the quality of coronal restoration versus the quality of root canal fillings on success of root canal treatment: a systematic review and meta-analysis Brian M. Gillen et al J Endod. 2011 Jul; 37(7): 10)

結論として、根管治療とクラウンは、同じくらい根管治療の成績に影響することがわかりました。ところで、保険で根管治療を行い、自由診療でセラミック・クラウンを被せるのが、一般的に行われている自由診療だと思います。しかし、クラウンだけでなく、マイクロスコープ、CT、ニッケルチタン回転ファイルという最新機器を用いて、根管治療も自由診療で行うことにより、より良い治療結果が出せると考えられます。

インプラントの場合は熟慮して手術を受けるのに、根管治療の場合は、あまり考えずに治療を受けることが多いと思います。これはインプラントには保険が全く効かず、根管治療には保険が通常効くことが影響していると思います。しかし、根管治療は、インプラント手術と同じく、重要な基礎工事に当たります。同じくらい重要ですから、精度の高い自由診療で根管治療を受けてもらいたいと考えます。