骨造成を回避する傾斜インプラント~骨が足りない場合~

上顎臼歯部(上顎の奥歯)には上顎洞という空洞が存在するために、ほとんどの症例において骨量は少なくなっています。上顎の骨は下顎に比べて軟らかいので、歯が抜けると急速に骨吸収をおこし、骨量は減っていきます。インプラント埋入の時には、骨が足りなくなっているのです。
このような場合のインプラント埋入には工夫が必要であり、手術の難易度は高くなります。手術方法には、骨が少ない場所を避けインプラントを斜めに埋入する「傾斜インプラント」と、上顎洞底部に骨を造成する「上顎洞挙上術(サイナスリフト、ソケットリフト)」とがあります。

ここでは、「傾斜インプラント」について説明します。

傾斜インプラントとは

上顎の傾斜インプラントとは、上顎洞を意図的に避け、骨が残存しているところにインプラントを傾斜埋入する方法です。上顎洞挙上術(サイナスリフト)を選択すると、治療期間が1年以上と長くなります。短期間で治療を行えるには、傾斜インプラントを選択します。
すべての歯を失った患者さまであっても、傾斜インプラントは可能です。特に上顎洞や下歯槽神経を避け4本のインプラントを傾斜埋入し、その上から固定式の歯(インプラントブリッジ)を装着することですべての歯を回復させることができます。これを「オール・オン・フォー」と呼びます。

傾斜インプラントのメリット
  • サイナスリフトより患者さまの手術侵襲は小さい(通常の埋入と同程度)
  • サイナスリフトより治療期間が大幅に短縮される(噛めるまで約1年を、最短1日に短縮)
  • 条件により、即時荷重インプラントも可能になる
傾斜インプラントができる条件
  • 傾斜インプラントは片足立ちできないため、複数本の埋入が必須
  • 傾斜埋入の角度を補正する角度付きアバットメントはノーベルバイオケア社とストローマン社のみが発売しているため、2社のインプラントシステムのいづれかを導入する必要がある

傾斜インプラントに対応したインプラントシステムについて
ノーベルバイオケア社の2ピース・インプラントシステムには、ブローネマルク・エクスターナル・コネクションとリプレイス・インターナル・コネクション、ノーベルアクティブのコニカル・コネクションの3つがあります。
プラットフォーム(フィクスチャーとアバットメントの接合部分)が内側三角形のリプレイス・システムよりも、外側六角形ブローネマルク・システムのほうが傾斜埋入の手術や補綴がしやすいため、傾斜埋入にはブローネマルクス・システムの導入が必要になると考えられます。
ブローネマルクの回転角度補正が30°に対して、リプレイスの回転補正角度は120°しかありません。リプレイスでは、マルチユニット・アバットメントのアクセスホールの位置を合わせにくいのです。
ノーベルアクティブのコニカル・コネクションは60°補正です。

なお、ストローマン社のクロスフィット・コネクションには、補正角度の異なるA、B二つのアバットメントがあるため、45度で補正できます。ボーンレベル・インプラントの角度補正に問題はありません。

メーカー名 接続様式 角度補正アバットメント 回転補正角度 垂直補正角度

 

 

ノーベルバイオケア社

エクスターナル・コネクション

 

 

マルチユニット・アバットメント
30°

 

NP 17°、RP17°と30°、WP0°

インターナル・コネクション 120°
コニカル・コネクション 60° NP 17°と30°、RP17°と30°
ストローマン社 クロスフィット・コネクション マルチベース・アバットメント 45° NC 25°、RC 25°

症例1

術前の口腔内写真

術後の口腔内写真

術前のX線写真

術後のX線写真

右上臼歯部の残存骨は5mm程度で、通常はサイナスリフトを行わないとインプラントは埋入できない。   2本のブローネマルク・インプラントを、上顎洞近遠心の残存骨に傾斜埋入した。角度付マルチユニット・アバットメントで角度を補正し、最終上部構造を連結した。右上第2小臼歯相当部のインプラントは、先端を口蓋部にふっているので、インプラントは第1小臼歯の歯根とは接触していない。
術後6年経過するが良好。

症例2

右上の犬歯は、破折していて保存不能であり、右上の臼歯4本も欠損していた。

前医では、「骨がないためインプラントはできない。」と説明をうけ、自由診療の入れ歯を入れてもらった。

費用をかけた取り外しの入れ歯であったが、噛みにくく、取り外しの入れ歯であることが不満だった。
また、入れ歯固定用のバネがかかっていた犬歯は、入れ歯の力で破折していた。

難易度の高いインプラント治療も可能な歯科医院を調べて、かねこ歯科インプラントクリニックを受診となった。

X線写真では、右の上顎洞底の残存骨は1~2mmであり、サイナスリフトまたは傾斜インプラントをしなければインプラント埋入は不可能であった。

患者は、早めの治療を希望したため、サイナスリフトでなく傾斜インプラントでの手術を選択した。

フラップを展開し、右上の破折した犬歯(右上3)を抜歯、直後にインプラントを埋入した。
唇側の骨欠損部には骨補填材を填入、仮歯をその場で装着する「即時荷重インプラント治療」を行った。
(リプレイス・テーパードNPx13mm)

右後方の傾斜インプラントは、歯肉下に沈めた。
埋入トルク(>45Ncm)は得られたが、傾斜インプラントは仮歯の破折などに伴いトラブルを起こしやすいため、骨結合を獲得するまでは慎重にしなければならない。
審美性にも問題ないため、右後方の傾斜インプラントは、歯肉下に沈める通常荷重とした。
(ブローネマルクMkIV RPx15mm)

治癒期間4ヶ月後に、傾斜インプラントの二次手術を行い、角度付きマルチユニット・アバットメントを連結した。

アバットメントレベルの型採りを行い、セラミックブリッジ 右上(6)54(3)を連結した。
術後4年経過するが、問題はない。

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